『限りなく完璧に近い人々〜なぜ北欧の暮らしは世界一幸せなのか?』という本を書いたジャーナリストのマイケル・ブースさんのトークショーに出かけてきました。
タイトルは、「世界一幸せ? 北欧社会のリアルを読み解く」。版元のKADOKAWA、マイケルさんが連載する朝日新聞GLOBE、フィンランド大使館との共催。
来年から大学院に行って幸福とはなんぞやということを研究しようとしているので、各種調査で幸福度が軒並み高いという結果が出る北欧の国々には興味津々。
でも恥ずかしながら、北欧5か国の国名すらさっと言えないくらい、これまで知識はなかったのです。
マリメッコやH&M、IKEAやNokia、映画にもなったレストラン「ノーマ」といったブランドネーム、北欧のシンプルで素敵なライフスタイル…というイメージのみが頭にふわふわあっただけ。
果たして北欧の国々は、実に教育と社会保障の行き届いたところなのでした。多くは教育と医療が無料で提供され、失業手当も手厚く老後の心配も少ない。
しかも男女平等で、フィンランド大使のお話によると、外務省で働く人の実に75%は女性。さらに、世界に散らばる大使の46%が女性。これ、クオータ制みたいに割り当て目標を定めた結果というわけではないというところがすごいですね。
(ノルウェーはクオータ制で成果を上げているそうです)。
クオータ制とか、フランスの「パリテ」という概念は興味深いので、いつかまた書いてみようかと思いますが、興味のあるかたは検索してみてくださいまし。
ちなみに、2012年、国連が初めておこなった幸福度調査によると、デンマークは幸福度1位。フィンランドは2位、ノルウェーは3位、スウェーデンは7位(ちなみに日本は43位)。
※国連のレポートのPDFはこちらからダウンロード可能。
Sustainable Development Solutions Network | World Happiness Report 2013
ただし、社会保障が厚いがゆえに所得税は50%前後と高いし、高齢化、格差、犯罪、地方衰退など、やはり日本と同じような問題を抱えている国々でもあるのです。
でもなぜ彼らは幸せだと感じているのか? それは「なりたい自分になれるように人生をコントロールできる」からじゃないかとマイケルさんは言います。自分の人生の主導権を握ることができるから、と。
北欧は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスの研究によれば、社会的流動性(ひとつの社会のなかで、職業や階級、場所の移動が可能かどうか)において、主要4か国が世界1〜4位を占めているそう。
その意味で、アメリカよりもずっと、なりたい自分になる自由ややりたいことをやる自由がある、といいます。上記調査でアメリカははるか下位に位置していますから。
これに欠かせないのが学校教育。経済格差が小さいこと、福祉のセーフティーネットが充実していることと同じように重要だ、というマイケルさんの話は本を読んでいただくとしましょう。
それにしても、どうやったらこんな北欧の国々のように幸せに暮らしていけるのだろう…と、電車に揺られて帰りながら考えてみたのですが、福祉や教育の充実、というのがひとつの解なのならば、所得税をもう少し支払ってもいいな、という結論に達しました。
それで老後も安心して暮らせるのならば、いいよね。
ちなみに、この本を書いたマイケル・ブースさんは、皮肉とユーモアたっぷりの『英国一家、日本を食べる』(原書は2010年発行の"Sushi & Beyond")の著者。NHKでアニメ化もされたので、記憶のある方もいらっしゃるかもしれません。
その"Sushi & Beyond"のアニメが、今年、農林水産省のYouTubeチャンネルで外国人向けに作成、公開されているので貼り付けておきますね。
今、マイケルさんは『英国一家、日本を食べる』の続編を書いているそうですよ。
今回、トークのテーマになった『限りなく完璧に近い人々〜なぜ北欧の暮らしは世界一幸せなのか?』もマイケルさんのユニークでウィットに富んだ語り口で、とても楽しく読める北欧論になっているので、興味の湧いたかたはぜひ読んでみてはいかがでしょう。
マリメッコ展にも行かなくちゃ!