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カメラを持って東京と日本各地と世界を行くエディターのフォトログ

読書と掲示板〜ピースボート乗船記

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掲示板

2019年4月20日から8月1日まで、横浜港を出港し世界一周して戻ってくる「第101回ピースボート」に乗船しています。その日々の記録を残していきます。

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2019年6月1日(土)、日の出06:31、日の入21:26 38°01′N 030°10′W 21℃ 大西洋

今日から大西洋横断が始まった。大西洋に出たら揺れると聞いたが、やはり朝から大きくうねるように揺れている。海流の関係なのか天候の関係なのか。

船内に迷い込んでいる小さな鳥を見つけた。出してやろうかと思ったが、扉を開けてもうまく飛んできてくれない。誰かが出してくれているといいけれど。それでも、群れからはぐれてしまった鳥はこの海の上で生きていけるだろうか。

船内新聞で確認すると今日は「企画少なめゆっくりデー」。機材メンテナンスが行われる場合、時々こういう日が訪れる。今日は読書と決める。船内ではなぜか、物語が読みたくなる。図書コーナーから選んだのは湊かなえの『物語のおわり』。高校生女子が書いた未完の物語がさまざまな旅する人の手に渡って、それぞれが自分と重ね合わせながら結末を考えるという連作短編だ。舞台は北海道。私は札幌にしか行ったことがないので、北海道を旅してみたくなった。

午後は誉田哲也の『インデックス』という短編集を選ぶ。『ストロベリーナイト』ののスピンアウトとして、刑事である姫川玲子のさまざまなエピソードが描かれている。私の父親は警察の人間だったので、警察小説には興味をもっていろいろ読んできた。子どもの頃は将来、婦警になりたいと言っていたこともあるが、実際になっていたらこんなタフな日々が要求されるのかと別の感想を抱く。自宅に積んである本にまだ読んでいない誉田哲也の本があることを思い出した。

以前は物語や小説がとても好きだったが、時間がなくなってくると自然に私の生活からカットされてしまった。特にこの2年間は大学院の課題図書をこなすのに精一杯で、おそらくまったく物語は読んでいなかったろう。物語を読むのは、心の中にスペースを作ることだなと思う。そのスペースでは想像力が自由に羽ばたく。船の上では思うままに時間を使い、退屈し、物語の世界に浸る。このうえなく贅沢な時間を過ごしているのかもしれない。

ところでインターネットの通じない船内では、カルチャースクールやイベントに出ない人はこうやって本を読んだりぼんやり過ごしたりするしかないわけなのであるが、活況を呈しているのが8階の掲示板である。ネット上の掲示板ではない、物理的な掲示板だ。

毎日、さまざまなことが書き込まれる。県人会開催のおしらせ。落とし物を見つけたらレセプションに届けてほしい。電波時計を船内時間に合わせる方法を教えてほしい。寄港先の情報求むなどなど。先日の御礼といった個人宛の内容もある。船内では部屋番号しか連絡を取るすべがない。なかには部屋番号を知らずにレストランや公共スペースで顔を合わせるだけの人もいる。そういった場合にこの伝言板で連絡を取り合うのだろう。

掲示板を眺めるのは毎日の楽しみになっている。どういった人がどういう目的で何を知らせたいのか、知りたいのか。想像してみるのが好きなのだ。そこにも確かに何かのコミュニケーションが生じている。

夜はリージェンシーでとんかつ。好みのものが食べられるとうれしい。単純なものだ。