EDIT THE WORLD

カメラを持って東京と日本各地と世界を行くエディターのフォトログ

モトリル・ジャカランダの花〜ピースボート乗船記

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Pueblos de América Parkのジャカランダ

2019年4月20日から8月1日まで、横浜港を出港し世界一周して戻ってくる「第101回ピースボート」に乗船しています。その日々の記録を残していきます。

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2019年5月27日(月)、日の出06:59、日の入21:23 スペイン・モトリル

間(あわい)という言葉がある。間(あいだ)と表現するよりも、そこにたしかにある「なにか」を言い留めているようで好きだ。

07:00、スペイン・モトリルに入港。まさに夜と朝の間(あわい)の時間だった。西の空には星が残り、東の空は白んできている。遠くにまだ明かりのともる町が見える。美しい。

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モトリルの港

モトリルというアンダルシアの港町に関する情報はほとんど手に入らない。ためしに日本語で検索してみると、ヒットするのは過去のピースボートに乗った人の体験ブログばかりだ。「港町」ですらなくただ「港がある街」であり、客を迎え入れる用意のある町ではないのだ。

多くの人はグラナダ・アルハンブラ宮殿を見物に行くツアーに出かけることになっているようだが、私は32年前にアルハンブラ宮殿を既にじっくり見ているので(この時はヨーロッパ周遊ひとり旅だった)、グラナダ行きは選ばなかった。

9:45から、「モトリルのバルとタパス体験」というツアーに集合。ツアー嫌いの私だが、事前に、効率よくバルをハシゴできるのならと思い申し込んでおいてしまったのだ。

最初に出かけたのがRon Montero。RONとはスペイン語でラムのことである。スペインと言えばワイン、さらにシェリーというイメージしか湧かないが、ここはヨーロッパ唯一のラムの醸造所であると説明を受けた。今では原料となるサトウキビは各国から輸入しているそうだ。

その後バルを2軒。1軒目に白ワイン1杯とタパス2品、2軒目にtinto de verano(赤ワインのソーダ割り)とタパス3品。このtinto de veranoとは直訳すれば「夏の赤ワイン」という意味で赤ワインのソーダ割りのことであるが、アンダルシアでよく飲まれる飲み方なのだそうだ。知らなかった。これが暑い昼間になんとも美味で、気に入ってしまった。

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tinto de verano

16:00、バルのハシゴツアーが終わり一度船に帰った。18:00からもう一度、夕食に出かけることにする。タパスを4品とtinto de verano。今夜の日没は21時過ぎなので、まだまだ町は明るいが、夕食をしているうちにだんだん夕暮れの気配が漂ってきた。

実は、このモトリルという町がまったく気に入らなかった。ただの「港のある町」だとしても、ここはアンダルシア地方だ。多少なりとも町に色気というものがあってもいいのではないかと思っていたのだが、それはまったくない。どこにでもある日本の地方都市と似たような感じがする。これなら無理してでもグラナダまで行くべきではなかったのか。出かけたときからずっとそう感じていた。

それが、夕食を終えてシャトルバスまでの時間を過ごすためにPueblos de América Parkという公園に立ち寄った瞬間に、不思議な感覚に包まれた。フクロウが控えめに鳴く。カエルが一斉に鳴き声を立てる。人々が犬を散歩させている。あたりにゆっくりと夜が忍び込んでくる。なぜか、懐かしいようなこの感じはなんだろう。

目に映る鮮やかな紫色の花を咲かせた木はジャカランダだ。ふわりと甘い香りが漂ってくる。そういえば、モトリルの町を移動する間じゅう、このジャカランダの花があちこちに見えていた。南米原産の木が、なぜモトリルの町のあちこちで花を咲かせているのだろう。

シャトルバスがやってくるのが見えた。どこかの世界に入り込んでしまったかのような美しい時間だった。これも昼と夜との間(あわい)。町がわずかな時間、見せてくれたマジックだった。

また自ら求めてモトリルという町に来ることはおそらく二度とないだろうが、モトリルを思い出すときには、このジャカランダの花と美しかった時間のことが浮かんでくるだろう。

船は24:00、モロッコのタンジェに向けて出航する。