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カメラを持って東京と日本各地と世界を行くエディターのフォトログ

船上読書『彼女は頭が悪いから』〜ピースボート乗船記

 

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『彼女は頭が悪いから』(姫野カオルコ/文藝春秋)

2019年4月20日から8月1日まで、横浜港を出港し世界一周して戻ってくる「第101回ピースボート」に乗船しています。その日々の記録を残していきます。

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2019年5月3日(金)、日の出07:13、日の入19:46 アンダマン海

旅先に持っていっても読まずに帰ってきたということが多いので、旅にあまり本は持ち歩かないようにしている。しかしkindleの登場で、その心配もなくなった。今回はkindleのハードを忘れてきてしまったのだが、iPhoneのkindleアプリで読めるので「大丈夫だ、問題ない」。

同室の方はiPhoneやデジタルカメラの使い方がよくわからないと言っているごく普通の女性なのだが、そんな彼女もkindleを持ってきていた。ずいぶんと浸透したのだなあと思う。

紙で買っていた本も消化しようと思い何冊か持ってきている。今日はその中のひとつである『彼女は頭が悪いから』(姫野カオルコ)を読んだ。が、私にはこの「小説」のおもしろさや興味深さがまったくわからなかった。

ご存じの方も多いと思うが、この「小説」は現実に起こった事件に着想を得た書き下ろしである。私の買ったときのオビには「東大でいちばん売れた本〜東京大学大学生協 駒場書籍部 文芸書ランキング1位( 2018年1〜12月)」とある(もし本当にそうだとするならば、東大生はどれだけ文芸書を読まないのだろうかと思った)。

内容は「頭がいい」ことを自明としてツルツルの心を持ったまま東大生となった男たち5人が「頭が悪い」大学の女子大生に酒を飲ませて強制わいせつをして起訴された事件を事前から追っているものである。事件の発覚後、非難されたのは被害者である女子大生だったということにも触れられている。

被害者の女子大生が5人に望んだ示談の条件はただひとつ、「東大生を辞めること」だった。なんだそんなこと、と飲んだ学生もあり、固持した学生もあった。いずれも、親の意見や判断が密接に絡んでいた。

それだけの話である。やるせなく、醜い話である。

だからといって、文章が美しくないという理由にはならないと思う。何かが生理に引っかかってどうしようもなく気分が悪い読み物なのだ(もっとも、それが作者の狙いなのかもしれないけれど)

もっとも印象的だったところを挙げるとすれば、主人公の女子学生の自宅(実家)のことを「バタバタと日常を暮らしてゆく善き家」と何度も何度も表現した部分である。世の中の平凡という事象を言い得て妙だと思った。

もう1度考えてみる。私がこの小説をおもしろくも興味深くもないと思うのは、私自身もこのような「善き家」で育った(という幻想を抱いている)からかもしれない。あるいは私が東大には行っていないからかもしれない。

 

ランチ後はスペイン語のオープンクラスに出席。今日は数字を1から10までどう言うかを教わる。皆で声を合わせて発音しながら、英語を習いたての中学生の時はこんな感じだっただろうかとふと思った。

 

今日から、友人達と運営している働く大人の女性向けのメディア「Beautiful 40's」でもピースボート乗船記を書き始めた。

パイプを海にくゆらせて〜ピースボート乗船記【1】

かつて私が結婚というものをしていたときに出会った、貨物船の船長をしていた洒落た義父との出来事を書いたものである。航海しているとあちこちで貨物船とすれ違うが、彼もああいう船に乗っていたのかなあ、と考えたりする。

くちびるに塩味夏の近づきぬ 美樹