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「あとぜき」ってどんな意味? 方言とコミュニケーションの幸福な関係。

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昨夜は、「熊本弁ネイティブの会」の忘年会でした。

熊本弁ネイティブの会とは、おもに首都圏在住の熊本出身者が集うFacebookグループ。

「なんで首都圏で会うと熊本ん出身どうしでん、標準語でしゃべっとだろか? こらつまらん。熊本んもんどうしだけん、おもさん熊本弁ばしゃべろうばい!」

(訳:なぜ首都圏で会うと、熊本出身者どうしでも標準語で話すのでしょうね?  おもしろくないことですね。熊本の者どうしなのですから、思いっきり熊本弁を話しましょうよ!)

ということで2012年から、有志のほんの思いつきで始まったのだそうです。私は発足からほどなくして、出身の先輩に誘われて参加するようになりました。

今年は熊本の震災もあり、この会で数度、首都圏での被災メーカーさんの物販と募金活動をおこない、故郷に少し貢献できた気がします。

この会、会話のみならず、Facebookグループの投稿でも熊本弁が必須。でも、変換がなかなか大変なんですよね…。

そんなネイティブが集っておおいに熊本弁で語り合う会。でも、長年、土地を離れていたりすると、なかなか言葉が出てこない人も多いものです。

興味深い研究結果があります。社会学者のホルムズによると、30歳から55歳までの年齢層の人は、その間、土地固有の言葉の使用頻度が少なくなるのだとか。

この年齢層は社会的活動に参加する機会が多く、社会的責任も大きいため、標準変種(standard variety=標準語に当たる概念)の使用がきわめて多くなる傾向にあるそうです。

その後の年齢層ではまた、ぐぐっと土地固有の言葉を使う頻度が高くなるという結果があるので、社会的活動がどれだけ行動に影響を与えているかわかりますね。

晩年ほど幸福度が高くなる傾向にあるという研究結果もありますので、上記のようなことも関係しているのかもしれません。

とはいえ、近年、急激に進んだ方言離れのいっぽう、最近では若年層が伝統方言に基づいた「新方言」を利用しているといい、人間環境学者の川村陽子氏は、それを「伝統方言の〈やぼったさ〉の中にむしろ個性を主張する機能を見い出しているといえる」と述べています。

「新方言」とは、若い人が今まで標準語になかった語彙を方言から取り入れて使う現象のことで、たとえば「違っていて」を「違くて」と言ったりするのはその例のひとつ(『日本語教育能力検定試験に合格するための社会言語学10』アルクより)。

どのような言葉を使うか、ということは、集団への帰属意識や連帯感、自己アイデンティティなどに関連すると考えられています。

熊本弁をしゃべりながら、私たちは、生まれ育った土地に所属しているという意識を確かにし、現代社会においてとかく薄くなりがちな連帯感を再確認しているのかもしれません。

ところで、記事の冒頭にかかげた写真に書かれている「あとぜき」は、熊本に生まれ、育ち、あるいは住んだことのある人なら誰しも理解できる言葉。

公共の場所や商店の出入り口などに書かれているケースが多く、もちろんしゃべり言葉としても使い、幼稚園児も知っています。

熊本人はこの言葉が熊本でしか通じないということを今でも知らず、私も東京に出てきたときに通じなくてびっくりしました。

本稿の読者のみなさまは、ググらずに、ぜひお近くの熊本人に「どういう意味?」と聞いてコミュニケーションを取ってみてくださることをおすすめします!