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EDIT THE WORLD

カメラを持って東京と日本各地と世界を行くエディターのフォトログ

自ら越えてゆけ〜新成人だった私へ。

エッセイ 人生 女性 幸福

20数年前、自分に見えているほんの周囲数メートルが世界だと信じ込んで少し絶望していた私に、今、時をさかのぼったらなにが言えるだろうか、と思って書いてみます。

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いま、希望に燃えているでしょうか、こんなものだと半ば諦めているでしょうか。

私たちの社会はすべてが自由だといいながら、いっぽうでは社会的流動性が低いということが指摘されていますね※。

社会的流動性とは、ひとつの社会のなかで、職業や階級、場所の移動が可能かどうかということ。生まれ育った環境にかかわらず、望む職業に就き、望む場所に住めるか、ということです。

基本的に、日本の社会においてはこれは自由にできるとされています。しかし、実際はそうではないということは、理屈じゃなくても、肌感覚でわかっていると思う。

だって、あなたは、このまま親と親戚と地域社会の「女はこのままこの土地に住んで一生をつつがなく暮らしていくものだ」という無言の大きな圧力を、身体全部で受け止めて、とてもきゅうくつに思っているよね。

先日は、「高卒と大卒の学歴分断線」という記事も話題になりました。そこには自分だけの考えや努力では越えられない分断があるという分析で、大きな反響をよんだのです。

でも、あなたはまず、両親が大学を出ていなかったにもかかわらず、彼らの応援もあって、努力をして進学しましたね。それは、あなたの乗り越えてきたひとつめの壁だったのかもしれない。

ただ、自宅から通える場所、という制限がなされて、他県や東京の大学を受験することは許されなかった。それは、その時は仕方ないことだったのだと思う。

これから先、もっと勉強したいとか、こんな仕事をしてみたいとか、ほかの土地に住んでみたいと思うときがきっとくると思う。いや、きてほしい。思考する力までも、環境に奪われてはいないでしょう?

社会がそうだからと言って、あなたが同じように行動する必要はない。慣習がなんだ、統計がなんだ、傾向がなんだ。あなたには、あなただけの場所を見つけにいくために、そんなものを自ら越えてゆく勇気をもってほしい。

ほんの小さな面積でしかないかもしれないけれど、確かに自分の足で立てる場所を見つけるために、ずっと考え、行動し続けてほしいのです。

そのために、いつも思い出してもらいたいのは、知識は力になる、情報は武器になる、経験は糧になるということ。

そして、大人は意外と頼りになるのだ、ということ。

それでは、20数年後に会いましょう。
この場所で、待っています。今でも走り続けながら。

 

Corak,M. 2013. Income Inequality, Equality of Opportunity, and Intergenerational Mobility.
いわゆる「グレート・ギャツビー・カーブ」として知られる格差の拡大と固定化を示すグラフ。このグラフによると、米国、英国、フランスなどは社会的流動性(Social mobility)が低く、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、デンマークの北欧主要4か国などは高いとされる。日本も社会的流動性が低いほうに位置づけられている。グレート・ギャツビー・カーブについてもっと詳しく知りたいかたはこちらのグラフ(Wikipedia・英語)も参照してください。