読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

EDIT THE WORLD

カメラを持って東京と日本各地と世界を行くエディターのフォトログ

アトリエという秘密基地にて。

エッセイ 写真 日記 女性

f:id:honey0202:20160113210005j:plain

あの時、ブランチで牡蠣のパスタを食べて白ワインを飲んでいなかったら、私は今夜、ここに来ていなかっただろう。

 

2009年。その人と知り合ったのはTwitterだ。私のパスタとワインの写真は友人にリツイートされ、見知らぬ女性をつかまえた。「おいしそう! 私も夜は牡蠣のパスタと白ワインにしよう」。そういうコメントがついた。

 

その人のプロフィール欄に、バッグデザイナーとあった。へえ。あんまり聞いたことのない職業の人だな。そしてウェブサイトを見に行き、作品は私の心をとらえ、すぐに注文を入れた。

後日、展示会に呼んでもらい、出かけて直接会った。「はじめまして」。そして彼女は偶然にも私と同じ年齢だった。

すらりと背が高く、スポーツでシェイプされた身体は軽やかに美しく、燃えたぎる情熱を内に秘めた彼女のデザインは、グラマラスで色気に満ちてコケティッシュで、文字通り「世界にどこにもない」彼女だけのものだった。

そのバッグをもつと、私自身も、情熱がかき立てられる気がした。女性であることが密かな誇りに思えるような、誰にも知られぬ秘密を大切に抱えているような、何かが沸き立つような。

f:id:honey0202:20160113211351j:plain

 

彼女が下町に構えたアトリエに、久しぶりに出かけた。会うのは2年ぶりだった。どうやら、彼女にとって大切な節目に私が現れるらしい。

 

新しいバッグのデザインを考え、オーダーが終わると、ロゼワインを開けてくれた。マイルストーンに乾杯というわけだ。パンとチーズとハムとオリーブ。ほかのどんな人たちのディナーよりもぜいたくだったと思う。

 

f:id:honey0202:20160113212351j:plain

 

彼女に、バッグデザイナーとして何を考え、これまでどう過ごしてきたかを改めて聞いてみたくなった。自分だけで聞くのがもったいないから、録音して音声ブログに収録させてもらった。

 

静かに更けていく夜に、ルイ・アームストロングの歌声がやさしかった。

 

そう、あの時、ブランチで牡蠣のパスタを食べて白ワインを飲んでいなかったら、私は今夜、ここに来ていなかっただろう。人生なんて、ほんの小さなきっかけの積み重ねなんだ。

そんな夜。


 

彼女のアトリエ。

latelier-exquis.tumblr.com

 

その時の音声が収められたRADIO BLOG。

note.mu