EDIT THE WORLD

カメラを持って東京と日本各地と世界を行くエディターのフォトログ

俳句をタイトルにした超短編小説集『夏物語』を無料配布します。

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「小説を書きませんか」と大手出版社から連絡があったのは今年の初め。「新しい文芸メディアを発刊します。ぜひ執筆陣に加わってください」

私は本業は会社員だけれど、傍らで如月美樹という名で俳人としての活動を始め、もうそろそろ20年になる。作品は『新日本大歳時記』(講談社)に採録され、NHKラジオ第1で季語と俳句を紹介するコーナーの台本とパーソナリティも経験した。パーソナルなシーンで肩書きは、と聞かれるとまず「俳人」と頭に浮かぶ。

 

でも、小説を書くという経験はなかった。いや、なかったと言ったら嘘になるか。小学生の頃にはノートに物語を書き続け、友達に回して読んでもらっていた。学生になってからはワープロで物語を書き連ね、未完の作品の断片がハードディスクにたくさん眠っている。旅を、ただの記録ではなく何らかの作品に結晶化させておきたくて、時たまショートストーリーを書くこともある。

 

しかし「小説」とは! とてもとても敷居の高い、越えられない表現方法のような気がした。

ただ、俳句に限界も感じていた。自分の表現者としての限界ではなく、理解し、共感してもらうことへの限界。

俳句は有季定型の文学、つまり、季語があって(基本的には)575の17音、という、型のある文芸である。その17音の中に宇宙すら盛り込めるという、非常に奥深い短詩で、私は現代の働く女性という立場でつくっているのだけれど、いかんせん、短すぎるし、季語との取り合わせを読み解くのが少し難しく、なかなかそのよさをわかってもらえない、というジレンマがあった。

しかし、俳句の世界では自作を解説するのは野暮な行為だとされる。野暮なことはしたくなかった。きっぱりと、潔く生きていきたい、という気持ちと同様に。

そこで、依頼をきっかけに、これまでに発表した俳句をタイトルにし、その世界はこんな風なのだよ、ということを小説で表現してみよう、という野暮な行為に手に染めてみることにした。

 

そうして、試行錯誤すること数か月。夏をテーマにした俳句と小説の3作目を編集部に納めた直後、その文芸メディアが中止になったという詫び状が届いた。

 

さて。

 

宙に浮いた作品をどうしよう。せっかくなので、読んでみたいという酔狂な人に読んでもらおうか。そう思い立ち、本の形にして無料配布することに決めた。1999年に平日毎日配信していたメールマガジン「俳句+ドローイング」企画の際にコラボレーションしていたイラストレーターの加藤龍勇氏と、何度もお仕事をしたことのある信頼するグラフィックデザイナー、武田英志さんが企画に賛同してくださり、イラストとデザインでご参加いただいた。

 

そうしてできたのがこの小さな作品集『夏物語』である。

依頼は2000文字の超短編小説だったので、どれもとても短く、小説と呼べるのかどうかもわからない。でも、この俳句には裏にこういうストーリーがあるのね、と思うきっかけにしてもらえたらうれしいし、そういう人が1人でも増えたら、俳句の世界にも貢献できるというもの。

興味をもっていただければ、そして読んでくだされば、これ以上の喜びはありません。

ぜひ以下よりダウンロードください。

 

『夏物語』如月美樹

https://www.dropbox.com/s/q2fyd7xf8lchiaw/natsumonogatari.pdf?dl=1