EDIT THE WORLD

カメラを持って東京と日本各地と世界を行くエディターのフォトログ

ニューヨーク1日目〜ピースボート乗船記

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Good morning, New York!


2019年4月20日から8月1日まで、横浜港を出港し世界一周して戻ってくる「第101回ピースボート」に乗船しています。その日々の記録を残していきます。

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2019年6月7日(金)、日の出05:25、日の入20:25 ニューヨーク

03:30、目が覚める。遠くに明かりが見えている。ロングアイランドだ。船は速度を落としている。

05:30、夜が明ける。マンハッタンが見えてきた。沿うように回り込んで近づいてゆく。自由の女神が見えてくる。これまで、短期留学も含めニューヨークに来たのはおそらく20回を越えると思うが、もちろん海から入るのは初めてだ。07:00にイーストリバーのピア88に着岸。

Good morning NYC!!

ニューヨークではすべての乗客、乗組員の対面審査が行われるので、08:00の審査開始から終了まで7時間程度かかるとあらかじめ知らされていた。昨夜の船内新聞によると、6階の乗客の呼び出し予定時刻は10:30。しばらく船内で時間をつぶすことにする。

10:00、6階の乗客のコールがかかった。対面審査場も予想に反してひどく混んではいない。10:30に街に踏み出すことができた。ピア88は50丁目に当たる。素晴らしい位置だ。

今日は船内で出会った、私と誕生年月日がまったく同じの女性と行動をともにする約束をしている。まずはニューヨークが初めてだという彼女が見てみたいというので、最寄り駅でもあるタイムズスクエアへ。ひとしきり記念写真を取りあったあと、メトロポリタン・ミュージアムに向かうことにする。

その途上で腹ごしらえをしようとセントラルパーク近くを歩いていると、MORINIというリストランテを見つけた。雰囲気がいい。うちはミシュラン2019にも掲載されているんだよ、というボーイの言葉に誘われるままに店内へ。

ここでロゼを1杯と、ケールサラダ、ボロネーゼをいただく。美味だった。隣に小さな男の子と座っていた若い母親が「私、夫と東京に行ったことがあるのよ! 素晴らしい街よね」と話しかけてきた。

メトロポリタン・ミュージアムは、平日の昼間とあってか、予想より混んでいなかった。3日間有効のチケットが25ドル。

ここで同行者と別れ、2時間後に待ち合わせることにする。ここはじっくり見て回ると何日あっても足りないが、今回の私の主目的は「CAMP」という期間展示。評論家のスーザン・ソンタグ(1933-2004)が、1966年のアメリカにおいて、自身の評論を集めて出版した『反解釈』に収められた『《キャンプ》についてのノート』を元にした展示である。『GUCCI』が後援に入っている。

ピンクで統一された展示空間は、オスカー・ワイルドの残した言葉、西洋絵画、そして現代のファッションで構成されていた。圧巻だった。

ミュージアムショップでいろいろと買い物をしてしまう。なかなかの出費。

メトの後はユニオンスクエアの有名書店STRAND BOOKSへ。1927年創業。20年ほど前にここで黒字に赤のロゴの入ったトートバッグを買ったものだったが、今は数十種類のトートバッグが並べられていた。今回は2枚、店のロゴ入りとミシェル・オバマのシルエット入りTシャツを買い求める。

MPDヘ移動。セレクトショップJefferyをのぞきハイラインを歩き、Hearthのハイライン店でリースリングを飲んでいるとどんどん時間が経ってゆく。ホイットニー美術館の展示も見たいと思っていたところドネーションの時間帯になり、長蛇の列。あきらめて、近くのメキシカンで夕食。ワカモレが美味だった。

船内ではニューヨーク入港中に国連との公式レセプションが行われることになっている。客人らしい人たちとすれ違いながら帰船するとすでに21:30になっていた。

自主企画の場所を予約する〜ピースボート乗船記

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霧に煙る大西洋


2019年4月20日から8月1日まで、横浜港を出港し世界一周して戻ってくる「第101回ピースボート」に乗船しています。その日々の記録を残していきます。

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2019年6月6日(木)、日の出04:49、日の入20:10 大西洋

大西洋に入ってからどうにも衛星通信の調子が悪く、たった1ファイルの原稿を送るために30分ほどMacの画面をにらんでいたがついに送れず、あきらめる。繋がらないのにカードの分数だけが減っていくという話を他でも聞く。私だけではないのだとわかったが、どうすることもできないので時間帯を変えて何度か通信を試してみるも繋がらない。

11:30、8階公共スペースの「アゴラ」へ。今日は女声合唱の練習場所取り当番なのである。希望の位置に紙を貼り、他の人とかぶれば時間を縮めて譲り合うかじゃんけんをするらしい。幸い、私たちの希望の時間には他の希望者がいなかったので、すんなりと予約が取れる。

午後はパスポートを受け取りに「スターライト」へ。基本的にパスポートは船が預かっていてくれるが、国によってはパスポートの携帯を義務づけられているので返却があるのである。米国はこれに当たる。

それ以外の時間はずっと佐々木譲の『警官の紋章』を読んで過ごす。これも船内図書室から拝借した。

夕刻、どうしても連載の原稿ファイルが送れないので、メッセージ画面にテキスト貼り付けで送ることになった。それでもメッセージ画面が出てくるまでに数十分待たなくてはならなかったのだが。船上の通信インフラってどうにかならないものだろうかねえ。

明日はニューヨーク。

オーシャンユース〜ピースボート乗船記

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暮れても青い大西洋


2019年4月20日から8月1日まで、横浜港を出港し世界一周して戻ってくる「第101回ピースボート」に乗船しています。その日々の記録を残していきます。

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2019年6月5日(水)、日の出05:33、日の入20:46 40°31′N 062°23′W 24℃ 大西洋

今日はいくぶん海は穏やかだ。

午前中は女声合唱へ。その後、場所取り係班長に任命された女性と2人で今後のシフトを話し合う。手元のレポート用紙を手で切って、手書きで各担当者へ伝言を書き込む。ネットという利器が使えないのでこういう原始的な方法に頼らざるを得ない。各部屋の扉に伝言を貼り付けて回る。

午後は「オーシャン・ユース」による「世界海の日とは」というトークイベントに参加。ピースボートでは2017年から毎年、太平洋、インド洋、カリブ海の島嶼国出身の若者を船に招待し、気候変動に関する周知活動「海洋保護・気候行動のためのユースアンバサダー・プログラム」を行っている。今回は8名の若者が乗船。船内ではリーダーシップトレーニングを行い、各寄港地では市民や政府代表者に向けてメッセージを発信しているそうだ。

ちなみに「世界海洋デー」は6月8日で、その日はニューヨーク寄港日に当たる。「オーシャン・ユース」は国連のパートナーと共に、世界海洋デーに関連するイベントを国連の正式プログラムとして行う予定とのこと。

最後に「なぜ海が好きか、そして海を持続させるために何を誓うか」という問いかけがあった。

16:00、「カサブランカ」でニューヨークの話を聞きたいという方と待ち合わせる。ちょっと飲みながらにしましょうというので、モヒートを選ぶ。彼女はニューヨークが初めてなので、メトロの乗り方や土地の距離感など知りたかったようだ。一通り、私のわかる範囲のことを伝えた。

ニューヨークでは船の全員が対面審査となり、着岸から終了までなんと7時間かかることが予想されている。自分の下船がいったいどのタイミングに当たるかわからないので、その日の行動予定がおおまかにしか立てられない。私はおそらく初日、メトロポリタン・ミュージアムの「CAMP」と題されたファッションの展示を見に行くことになるだろう。2日目は土曜日なのでブルックリンのスモーガスバーグでも目指してみようか。

17:30、女声合唱の先生ご夫妻と居酒屋「波へい」で待ち合わせて食事。横浜の乗船体験会以来の再開を喜び合う。

今夜も時差調整日。時計を1時間戻して、これで日本との時差は13時間。このままニューヨークへ寄港する。

「うつくしいふくしま」を歌う〜ピースボート乗船記

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荒れる大西洋


 

2019年4月20日から8月1日まで、横浜港を出港し世界一周して戻ってくる「第101回ピースボート」に乗船しています。その日々の記録を残していきます。

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2019年6月3日(月)、日の出06:31、日の入21:35 39°26′N 046°18′W 22℃ 大西洋

朝から頭痛がひどい。昨夕、「スターライト」でピアノとバイオリンのコンサートがあったのでその時にコロナを1本飲んだ。その後、ディナーにサービスで白ワインが1杯ついてきた。夜に「カサブランカ」で赤ワインを1杯。その時ご一緒した方のウイスキーを水割りで1杯。

通常、地上ではこれくらいの量では二日酔いをするはずがないが、船に乗ってからというもの、少しでもお酒を飲んだら翌日にかなり響くということが続いている。船という環境のせいか、体質の変化か、あるいはもともとそういう体質だったのが際立ってきたせいか。ちなみに私の母はお酒が一滴も飲めない。

11:30、なんとか力を振り絞って女声合唱に出かける。今日は「紅葉」を二声で練習した。以前、ゴスペルクワイヤーに所属していたときはソプラノだったが、今回はアルトを選ぶ。年を取ると、声も低くなってくることを自覚している。クワイヤーに所属していた時のアルトメンバーが皆、個性的な女性ばかりだったことを思い出し、ひとりでクスリと笑ってみる。私が今、アルトを歌っているというとみんな、何というだろうか。

講師の田野先生は福島県郡山市の方だ。楽都と呼ばれるほど音楽の盛んな市である。先生から「うつくしいふくしま」という歌を皆で歌ってくれないかと提案を受け、楽譜を受け取る。楽譜をなぞりながら皆で歌う。マイナーのメロディーがとても心に響き、涙してしまう。音楽の力はいつも偉大だ。

女声合唱は自主企画であるため、数名で今後の場所取りのお手伝いを買って出ることにした。話しているうち、ふと思いだした。私のiPhoneのメモに「田野様ご夫妻」と書いてある。昨年、横浜港でオーシャンドリーム号の見学会があったときに、同じテーブルに着いていた方ではないか? 聞いてみると、まさにそうだというではないか! 「主人とずっと、1100人もいるんだからあの時の方は見つけられないかもねえ、と話していたのよ」とおっしゃる。ふたたびのご縁があったことを喜び合う。

リージェンシーに昼食を取りに行くもあまり食欲がないので、なんとか押し込むという感じになる。その後はますます頭痛と悪寒がひどくなり、結局はずっと部屋で横になっていた。夕食は売店で買ったコーンスープ1杯がやっとだ。

「うつくしいふくしま」のメロディーを頭に繰り返しながらそのまま就寝する。夜中からますます海が荒れて揺れがひどくなってきた。

トラベルミンをもらう〜ピースボート乗船記

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トラベルミンをもらう

2019年6月4日(火)、日の出06:02、日の入21:10 40°03′N 054°35′W 24℃ 大西洋

相変わらず波は荒く天気が悪い。起きてもまだ偏頭痛がする。三日酔いか? 低気圧のせいか? それは船酔いではないかとの指摘を受け、朝からレセプションで酔い止め薬「トラベルミン」をもらって飲んでみる。ほんのり甘い。少し眠気を催す薬らしく、うとうとして目が覚めたら頭痛は嘘のように消え去っていた。やはり船酔いだったのか。わからないが。

11:30、女声合唱へ。発声、「紅葉」、「うつくしいふくしま」、「故郷」を練習する。ゴスペルを歌っていたときの癖で、音を立てて息を吸ってしまう。この癖は、その後通ったラテンボーカルレッスンでも厳しく戒められた。ジャンルによって歌い方も違うのだ。

この講座は自主企画であるため、練習場所を先生が押さえてくださっているそうだ。しかもピアノの置いてある場所となると「ブロードウェイ」という会場1か所しかない。先生の負担を減らすため、場所取り隊を結成しましょうということになったことは昨日書いたが、10名の有志が集まった。ミーティングで「お若い方にとりまとめ役をお願いしたい」ということで、私ともうひとりの本当に若い女性が選ばれた。私の年齢でも若手と呼ばれる場所、それが船旅なのである。

船の中では積極的に何かをすることを避けよう、知り合いを積極的に作ることはやめようという予定だったのだが、やはりそうは言っていられなくなってきた。

午後は宮部みゆきの『楽園』を読んだ。最後まで、なんだかよくわけがわからないと思っていたら、解説を読んで『模倣犯』という作品の続編かスピンアウトに位置づけられる小説だったと知る。どうりで、小説の中で自明のこととして書いてあることがらが私にとっては「自明」ではなかったわけだ。なんだかスッキリしない。

夜にリージェンシーで食事をしようと思うも、前菜、スープ、メインのそれぞれに私の苦手なタマネギが満載の料理だったので、申し訳ないとサーブを辞して部屋に戻って缶コーンスープとポテトチップスでしのぐ。こういう時に、苦手な食材があるのはつらい。

その後洋上シネマで『ラ・ラ・ランド』を見る。これも大学院で課題に追われて見そびれていた映画だ。当時、主題曲がラジオで盛んに流されていたことを覚えている。冒頭のモブシーンは素晴らしいと思ったが、その後は「あれ?」と思っているうちに終わってしまう。ラストシーンもあまり私好みではなかったので、残念ながら私のもう一度見たい映画にはランクインしなかった。

今夜も時差調整日。寝る前に時計を1時間戻す。これで、日本との時差12時間。 

パーティー&ディナー開催デーとブリッジ見学〜ピースボート乗船記

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オーシャンドリーム号のブリッジ


2019年4月20日から8月1日まで、横浜港を出港し世界一周して戻ってくる「第101回ピースボート」に乗船しています。その日々の記録を残していきます。

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2019年6月2日(日)、日の出06:58、日の入22:03 大西洋

今日はパーティー&ディナー開催デー。長い移動時にときどきこんな日がある。夜には民族衣装ファッションショーもあるということで、朝からさまざまな衣装を着た人が行き交う。私もギリシャのサントリーニ島で買ったチュニックとピアスを身につけた。

10:50、「女声合唱でハモりませんか」という自主企画を見つけた。私は以前10年ほどゴスペルを大人数で歌っていた経験があり、船内でもぜひ歌う企画に参加したいと思っていたのだけれど、なかったので少し残念に思っていた。合唱の経験は高校以来ないけれど、声を出したいと思って参加してみる。

講師のかたは、福島県郡山市で合唱の指導をなさっているそうだ。楽都とよばれる市で、半年ほど前に「郡山ブランド野菜」の取材に行ったこともあるので、ご縁のある場所だ。うれしく思いながら、集まってきた50名ほどの女性たちと声を出す。合唱の発声は難しいが、多くの人と声を合わせるという体験にはやはりワクワクした。

後日、さまざまなカルチャースクールや自主企画で発表会が予定されている。唱歌「紅葉」で発表を目指すそうだ。やはり声を出すと気持ちいい。明日からの継続参加を心に誓う。

ランチ後はスペイン語のクラスへ。今日からジャスミンという名の先生に変わったが、彼女とは乗船初期に夕食時、たまたま一緒の席になり、その時は英語で会話を交わしていた。メキシコ出身とのことだった。英語の先生かと思っていたらスペイン語の先生だったのね。これまでの復習を中心におこなう。

16:00、念願のブリッジ(操舵室)見学へ。ブリッジ見学者の募集は8階の掲示板にある日急に張り出され、見つけた人からその場で名前を書き込んでいくというスタイルなので、なかなか予約が取れない。今回、ようやく予約がとれて参加することができた。

ブリッジでは操縦桿を握っている人がいるのかと思いきや、予想に反して無人だった。現在はほぼ自動化されており、その必要はないのだとか。なくなった職種として通信士が挙げられた。通信はすべて衛星を使って無線で音声にて行う。とはいえ、信号機の出番はあるようで、AからZまでしっかり準備されていた。

船の走行に欠かせないのがもちろんGPS。昨年、大学院2年時に「宇宙システム工学」という講義を取っており、そこでGPSなど位置情報についてその歴史から有用性、防災や農業、スポーツなどへの応用までを学んだが、そのことについて思い出す(日吉から矢上キャンパスまでの道のりのいつもつらかったこと!)。

夕食は特別なディナーメニュー。グリークサラダ、マッシュルームのポタージュ、サーモンのコンフィ、ガトーショコラ。スペインの白ワインもついてきた。皆、おしゃれをしてきており華やかな雰囲気に包まれている。

夜は民族衣装ファッションショーが行われる。大勢の人が出場するようだ。見に行くつもりで移動していたら、バー「カサブランカ」で知った顔を見つけてそこに座ってしまった。赤ワインを1杯。以前にピースボートに乗ったことがあるというその方と、次回の寄港地であるニューヨークでの体験を聞かせてもらう。船で早朝、入港するときの景色がとても素晴らしいそうだ。

ニューヨークへは通算、10回以上行っているが、船で入港するのは初めてなので楽しみだ。

24時、時計を1時間戻した。これで、日本との時差は10時間。

読書と掲示板〜ピースボート乗船記

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掲示板

2019年4月20日から8月1日まで、横浜港を出港し世界一周して戻ってくる「第101回ピースボート」に乗船しています。その日々の記録を残していきます。

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2019年6月1日(土)、日の出06:31、日の入21:26 38°01′N 030°10′W 21℃ 大西洋

今日から大西洋横断が始まった。大西洋に出たら揺れると聞いたが、やはり朝から大きくうねるように揺れている。海流の関係なのか天候の関係なのか。

船内に迷い込んでいる小さな鳥を見つけた。出してやろうかと思ったが、扉を開けてもうまく飛んできてくれない。誰かが出してくれているといいけれど。それでも、群れからはぐれてしまった鳥はこの海の上で生きていけるだろうか。

船内新聞で確認すると今日は「企画少なめゆっくりデー」。機材メンテナンスが行われる場合、時々こういう日が訪れる。今日は読書と決める。船内ではなぜか、物語が読みたくなる。図書コーナーから選んだのは湊かなえの『物語のおわり』。高校生女子が書いた未完の物語がさまざまな旅する人の手に渡って、それぞれが自分と重ね合わせながら結末を考えるという連作短編だ。舞台は北海道。私は札幌にしか行ったことがないので、北海道を旅してみたくなった。

午後は誉田哲也の『インデックス』という短編集を選ぶ。『ストロベリーナイト』ののスピンアウトとして、刑事である姫川玲子のさまざまなエピソードが描かれている。私の父親は警察の人間だったので、警察小説には興味をもっていろいろ読んできた。子どもの頃は将来、婦警になりたいと言っていたこともあるが、実際になっていたらこんなタフな日々が要求されるのかと別の感想を抱く。自宅に積んである本にまだ読んでいない誉田哲也の本があることを思い出した。

以前は物語や小説がとても好きだったが、時間がなくなってくると自然に私の生活からカットされてしまった。特にこの2年間は大学院の課題図書をこなすのに精一杯で、おそらくまったく物語は読んでいなかったろう。物語を読むのは、心の中にスペースを作ることだなと思う。そのスペースでは想像力が自由に羽ばたく。船の上では思うままに時間を使い、退屈し、物語の世界に浸る。このうえなく贅沢な時間を過ごしているのかもしれない。

ところでインターネットの通じない船内では、カルチャースクールやイベントに出ない人はこうやって本を読んだりぼんやり過ごしたりするしかないわけなのであるが、活況を呈しているのが8階の掲示板である。ネット上の掲示板ではない、物理的な掲示板だ。

毎日、さまざまなことが書き込まれる。県人会開催のおしらせ。落とし物を見つけたらレセプションに届けてほしい。電波時計を船内時間に合わせる方法を教えてほしい。寄港先の情報求むなどなど。先日の御礼といった個人宛の内容もある。船内では部屋番号しか連絡を取るすべがない。なかには部屋番号を知らずにレストランや公共スペースで顔を合わせるだけの人もいる。そういった場合にこの伝言板で連絡を取り合うのだろう。

掲示板を眺めるのは毎日の楽しみになっている。どういった人がどういう目的で何を知らせたいのか、知りたいのか。想像してみるのが好きなのだ。そこにも確かに何かのコミュニケーションが生じている。

夜はリージェンシーでとんかつ。好みのものが食べられるとうれしい。単純なものだ。

 

 

ポルトガル、アゾレス諸島、ポンタ・デルガーダ〜ピースボート乗船記

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José do Canto Garden

2019年4月20日から8月1日まで、横浜港を出港し世界一周して戻ってくる「第101回ピースボート」に乗船しています。その日々の記録を残していきます。

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2019年5月31日(金)、日の出06:18、日の入20:57 37°44′N 025°40′W 22℃ ポルトガル、ポンタ・デルガーダ

11:00、ポルトガル本土から西へ1800km。ポルトガル領アゾレス諸島の首府、サン・ミゲル島のポンタ・デルガーダに着岸。地図で確認するとまさに「大西洋の孤島」といった表現が当てはまる。アゾレス諸島は、欧米を結ぶ海空路の中継地である火山群島である。亜熱帯に属する。

島の見どころである豊かな自然のある地区に出かけるツアーは残念ながら取っていない。ひとりで出かけるにも足がないので(タクシーツアーはたくさんあったが)、今回はポンタ・デルガーダの街中散策を楽しむことにする。

唯一のランドマークでもあるポルタス・デ・シダーデ(街の門)から入る。ポンタ・デルガーダは昨日まで大きなキリスト教関連の祭りがあって、賑わっていたそうだ。今日は教会や商店の周囲で片付けをする人の姿が目立つ。ランチをしようとあらかじめマークしておいたベジタリアンレストランに行くと、今日から5日間、休暇を取るとの張り紙があった。残念。

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ポルタス・デ・シダーデ

近くの通りの適当なレストランに入る。以前、ポルトガルを旅したときはスペインのタパス的な鰯の料理などを堪能したものだったが、ここにはそういった料理はなさそうだ。パイナップル(この島の名産品)やチョリソーなどが乗った「リージョナルボード」という名前のつまみと、白ワインを1杯。英語が話せる店員は1人しかいない。

この先の予定があるわけでもない。ゆったりとした時間を楽しみながら食事をしていたが、勘定を、と伝えて伝票を持ってくるまでに40分を要したのにはちょっと参った。要するに、のんびりした街なのだ。16.5ユーロ。

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リージョナルボード

今日はツアーを取っている人が多いのか、小さな街中でもあまりピースボートの乗客と会わない。寄港地続きの日々、ゆっくりとひとりで心身を休めたいという気持ちもあり、José do Canto Gardenへ。パンフレットも処分してしまいネットも繋がらないのでここの来歴は後日、書き加えるが、とても静かないい公園だった。

美しく整えられた庭園、パレスと呼ばれる鮮やかなオレンジ色の建物。入園に2ユーロかかることもあってか、人の姿はほとんど見られない。ところどころにベンチも置かれている。木陰に座り、鳥の鳴き声を聞くともなく聞いていた。静かだ。

街をぶらぶらしながらいくつかの教会を巡ってみたが、どこも昨日までの祭りの名残をとどめてしんとしていた。

ポルタス・デ・シダーデまで戻り、サン・セバスチャン教会前の広場で地ビールを頼んでみる。実は船に乗ってから、お酒(特にビール)をおいしく感じなくなってしまった。環境だろうか、体質の変化だろうか。午後から曇り空になってきた空の影響もあってか、ここでもビールをあまりおいしく感じなかった。

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ビールを飲む

教会の前では地元の若者たちがアコーディオンとフルートで楽しげな曲を演奏し、ある者は踊っている。しっかりとチップ箱が置かれている。今日は金曜日のはずだが何をしているのだろうとちらりと思う。あるいはお祭りの翌日で休みなのかもしれない。

ファーマーズマーケットという公共の看板を見つけてあったので、行ってみることにした。野菜、フルーツ、花。どこの街でもマーケットに行くのは楽しい。いつもより客が少ないのか、店番をしている人々は少し退屈そうにしている。

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ファーマーズマーケット

16:30、いったん、船に帰った。寄港地では、レンタルしているグローバルWi-Fiが通じるのでまとめてネットでの作業をする時間が必要だ。ふだん、常時オンラインでの生活をいかに当たり前に感じて生活しているのか、船に乗ってから思い知らされている。不便を楽しむなんてことは私にはできそうにない。ネットからの隔絶は、かなりのストレスを私にもたらしている(その分、100分2100円のカード代がかさんでいる)。

18:30、今日は帰船時刻が21:00と遅いので、もう一度街に出て夕食を取ることにする。さっき目をつけておいた店だ。Calçada do Cais。岸辺の散歩道、というような意味だ。この地域にしては明るい店内。メニューはモダンだ。

今日のスープ(グリーンピースのスープだった)とマッシュルームのリゾットを選んだ。もちろんポルトガル産の白ワインも。グラスにたっぷりと注いでくれる。すべて美味だった。15.5ユーロ。

以前、ポルトガル本土に行ったことがあると書いた。その時は、歴史をなぞる場所に出かけてこの国の来し方と日本との関係性などについて考えたものだったが、この島の観光ではそういったことを考えるようにはできていない。島は島として楽しめたが、また機会を見つけてポルトガル本土へも行ってみようと思う。

雨が降り出した。支払いを済ませてパーカのフードをかぶり、船へと急ぐ。日没は20:57。今日も夕暮れに沈む街を見ることはできそうにない。

「生きづらさ」という決めつけ〜ピースボート乗船記

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船室窓辺の薔薇

2019年4月20日から8月1日まで、横浜港を出港し世界一周して戻ってくる「第101回ピースボート」に乗船しています。その日々の記録を残していきます。

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2019年5月30日(木)、日の出05:49、日の入20:35 37°02′N 018°23′W 21℃ 大西洋

昨日より波はいくぶん穏やかになった気もするが、相変わらず揺れている。私はといえばぐっすり眠って快調。モロッコ・タンジェで買った薔薇が窓辺で美しく咲いている。

このところ朝食を少なくしている。フレンチトーストとパンケーキをいただくのをやめたのだ。だいたい、普段、朝はコーヒーとシリアルだけという生活をしているのに、提供されるからといってなんでも食べているとカロリーオーバーになる。身体が重い感じがするのもそれが影響しているのではないかと思い、コーヒーとフルーツとヨーグルトだけにしてみたところ、すこぶる午前中の体調がよくなった。

午前の早い時間は図書コーナーで見つけた池井戸潤の『銀行狐』という短編集を読む。この方、短編も書いていたのだなあ。しかも、解説に銀行に入る前に大学でミステリサークルに入って小説を書いていたとあった。もともとの「書きたい」意欲が銀行という体験を経て開花したのだ。私は半沢直樹シリーズも好きだが、再度ドラマ化されるという報に触れて密かに楽しみにしている。

10:15、国連SDGアクションキャンペーンで働くローラ・ヒルブラント氏の「SDGアクションキャンペーンとは?」という話を聞きに行く。SDGsについて知らない人向けだったのでちょっと物足りなかったが、SDGsのなりたちについてはよく理解できた。全世界にパブリックコメントを求めたという事実については寡聞にして知らなかった。77%が30歳以下の人からのコメントだったというが、この中に日本人は含まれているのだろうかと気になった。

13:00からとある水先案内人の話を聞きにいったが、残念ながらこの方の話にはあまり共感できなかった。コミュニティ・オーガナイジングという手法についてお話をされたのだが、「幼少期に自分の遊び場を行政に奪われた怒り」という原動力がなぜ「女性の生きづらさを変える」というアクションに繋がるのだろうか。そのあたりにだいぶ隔たりがあるような気がしたのだ。

この方もそうだし、先日まで乗っていたタレントの水先案内人もそうだったが、このところ、社会活動に「生きづらさ」という言葉を使ってしまうことが気になって仕方がない。非常に強い言葉であると思うからだ。「あなた、生きづらさを感じているよね?」と聞かれると「お、おう」としか答えられないような「決めつけ」を感じてしまうのだ。もがいてもがいて必死で今日を生きている私の日々を、誰かに「生きづらさ」という言葉でくくってほしくないという気持ちが働く。

夜はピアニストの方のコンサートへ。ジャズ、ボサノバからポップスまで。これも残念ながら私にとってはあまり満足いくものではなかった。以前、ファンでも何でもないミュージシャンがピアノに座り「ポーン」と1音鳴らしただけで訳もわからず胸にズドンと何かを打ち込まれたような経験をしたことがあるが、私にとっての音楽ってそういうものだから。

ピアニストはNew York State of Mindを弾いたが、以前、私の胸に確かに何かを打ち込んだ綾戸智恵のNew York State of Mindが聴きたくなった。

船酔いしながら猫のことを思う〜ピースボート乗船記

 

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大西洋


2019年4月20日から8月1日まで、横浜港を出港し世界一周して戻ってくる「第101回ピースボート」に乗船しています。その日々の記録を残していきます。

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2019年5月29日(水)、日の出05:19、日の入20:00 36°20′N 010°22′W 21℃ 大西洋

移動中日。大西洋に入って、夜中から本当によく揺れる。船が円を描いているような揺れ方だ。時折、ドスンと波が船体に当たる音と衝撃がやってくる。気持ちが悪いという人がかなり多いけれど、私はむしろふわふわと気持ちがいい。寝ていると揺りかごに乗せられているようだ。いつもきっちりと部屋の掃除をしてくれるインドネシア人青年も「起きたとき船酔いで頭が痛かったです」という。

大西洋に入るとガルフストリーム(メキシコ湾流)の影響を受けると聞いたことがある。そのせいだろうか。近くに低気圧があるからという話も聞いた。

そのうち、ふと吐き気がした。これは船酔いだろうか。食欲もあまりない。昨日歩き回った疲れも残っている。観念して、船内イベントなどにも出かけず部屋でゆっくり過ごすことにした。PCをひらき、昨日の記録を書く。これまで撮った写真の整理をする。本を読もうと思ったのだが、目を落とすとやはり少し吐き気がする。もしかしたらこれが船酔いなのもしれない。

ちょっと現実から離れてみようと(戻ってみようと?)、熊本の実家に預けてきた猫たちの写真を眺めてみる。実家からはたまに「元気にしているよ」「我が家に慣れたので大丈夫」といったメールが届く。

猫たちを実家に預けるに当たっては、けっこう大変な作業を要した。まず、猫をそれぞれに捕まえてバスケットに入れる作業が難航した(片方を入れると片方がどこかに身を隠す)。タクシーで羽田空港まで移動。日本国内ではペットを座席に同行させて持ち運ぶことはできないので、空港にて大型手荷物として猫を預ける。この時クレートと呼ばれる犬猫用のバスケットに入れ替える。

これがいちばん、大変だった。カウンターで、猫を自分の手でバスケットからクレートに入れ替えるのだ。誰の助けもなしに。暴れたら? 逃げたら? 猫のボディに取り付ける散歩用の紐を買っておいたのだが、2匹とも嫌がってつけさせてくれない。仕方なく、むきだしのまま猫をなんとかクレートに押し込んだ。ここで猫が逃げ出したらどうなるのだろう。羽田空港のロビーを2匹の猫が走り回る様を想像する。

クレートの中に入った猫はいかにも不安そうに目を大きく見開いて片隅に縮こまっている。この後、暗く轟音の聞こえる貨物室に入れられて1時間40分も放っておかれるのかと思うとかわいそうでならないが仕方がない。料金はペットの大きさによって変わるが、我が家の猫たちは大きいので1匹6000円かかった。合計1万2000円。

熊本の空港に着いたら、今度は預けた手荷物の出てくる場所でクレートから自分のバスケットに猫を入れ替えなくてはならない。この時、1匹の猫が力の限り踏ん張って出てこないのでこちらも力の限り引きずり出さねばならなかった。よほど怖かったのだろう。よく見ると、猫の前足の指先に血がにじんでいた。申し訳ないことをした。

いざ実家に連れていくと、見慣れぬ場所と見慣れぬ人で、ソファの下に隠れて出てこない。神経質なほうの猫が、翌日鼻を真っ赤にして出てきたと思ったら高熱を出していた。

そんな猫たちも今では実家で走り回り、先住猫と仲良くして、階段を上り下りして大はしゃぎしているらしい。慣れてくれてよかったが、あと2か月後に、もう狭い東京の1LDKには帰りたくないといわれたらどうしようという不安もよぎる。それよりも、あなたは誰ですかという態度をされたらどうしよう。心配は尽きない。

夕食時も、食欲がなくあまりおなかに入らなかった。猫のことを考えたせいなのか、船酔いのせいなのかよくわからない。好物の鮭いくら丼だったのに、もったいないことをした。

 

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我が家の猫たち