EDIT THE WORLD

カメラを持って東京と日本各地と世界を行くエディターのフォトログ

大人の女の「おばさん」論。

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「おばさんになりたくないよね」というけれど、「おばさん」って、なんだろう。『大辞林』で引いてみると、

 

他人である年配の女性を親しんでいう語

 

とある。これだけだと穏やかなのだけれど、 さらに、

 

若々しさが感じられないという意で、皮肉や自嘲の気持ちを込めても用いる。「――くさい格好」「もうすっかり――だ」

 

ともある。つまり、「おばさん」とは、皮肉ったり自嘲したりする時の呼び方なのだ。

 

誰もが年をとっていくので、自分や人のあり方を皮肉や自嘲を込めて表現したくはない。それでもおばさんと呼びたくなる時があるのは、なぜだろう。

それは、自分やその人に想像力がない時じゃないか、と考えている。

 

自分と人は違うのだ、ということに対して考えが及ばず無自覚な考えをもったり発言したりしてしまった時、私はきっと限りなく「おばさんくさい」のだと思う。

 

小さいときや若い頃は、世界が狭かった。ずっと同じ土地に住み、似たような境遇の人が集まる学校に行き、同世代の人たちと集っていた。想像力もその範囲で働かせればよかった。

 

大人になるにつれ、周囲には違う境遇で育った人や違う世代の人が増えていき、同じように暮らしていた同世代の友人達と自分のライフスタイルも大きく違ってくる。特に女性は、夫や子どものありなしでもかなり生活が変わってしまう。

 

目をもっと遠くに転じてみれば、世界にはまったく違う文化や価値観をもち、違う常識をもってさまざまな境遇で生きている人たちがいる。それはもう、想像を絶する世界に生きる人々の姿が、今日もニュースフィードに表示されている。

相手と自分は違うのだ、ということを前提にコミュニケーションができれば、なんと心地よいことだろう、と思う。


そこには皮肉も自嘲もいらない。

 

サン・テグジュペリの『星の王子さま』の中に、こういう一節がある。

 

On ne voit bien qu'avec le cœur.L'essentiel est invisible pour les yeux.ーこころで見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない。(訳:河野万里子)

 

キツネが王子さまに教えた「秘密」だ。有名な一節だけれど、この後にキツネはこう言っている。

 

きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ。(訳:河野万里子)

 

ほんの少し、想像力を働かせる時間を取ってコミュニケーションしてみると、きっと相手は私にとってかけがえのない存在になる。

 

そうできれば、私は大辞林がいうところの「他人である年配の女性を親しんでいう」おばさんになれるのではないか、とひそかに思っている。

 

--

 

さて、ブランド・コンサルタントの守山菜穂子さんと2016年限定で続けてきたサウンドマガジン+ブログの「Beautiful 40's」、いよいよ今月で最終回。今回は「おばさんといい女の違いとは?」というテーマでトークをしているので、ぜひお聴きください。


音声を聞く環境にない、というかたにはテキスト全文書き起こしのページもあるので、下記からぜひ。

photo: Miki IKeda

 

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私たちが次世代の女性たちの"スポンサー"になるという考え方に納得〜WEF TOKYO 2016イベントレポート。

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Women Empowerment Forum TOKYO 2016(主催:株式会社リンクス、株式会社メディアジーン/ 共催:ALL LADIES LEAGUE/ 協力:株式会社インフォバーン)というイベントにお誘いいただき、出かけてきました。

 

場所は虎ノ門のアンダーズ東京 Tokyoスタジオ。

 

これは、外務省の国際女性会議「WAW! 2016」(World Assembly for Women)の公式サイドイベントのひとつ。さまざまな分野で活躍する女性同士でイノベーションを起こしていくためのプラットフォームをつくり、醸成していくことを目的としてひらかれました。

 

また、世界最大の女性団体であるALL LADIES LEAGUE(本部はニューデリー)の東京バージョンとしての開催でもあります。

 

参加したのは、「既成概念にとらわれず、新しい価値観を生み出す」女性リーダー100名とのこと。

 

参加者名簿をいただくと、メーカー、サービス、メディア、政治など、さまざまな分野で活動する女性たちがたくさん! すごいメンバーばかりです。

 

そんななかに混じらせていただいたことは光栄ですが、なんだかちょっと気後れしちゃう私…。

 

コンセプトのなかに「いま会っておくべき100人の女性たち」というものがありましたが、これがしっくりきました。

 

「しなやかに美しく社会を変えるために女性ができること」について各自が考えたことを書いて貼っていく"チャレンジボード"や(ちなみに私は「対話」と書きました)、ネットワーキングディナーなどで楽しく過ごしました。

 

なかでもおもしろかったのが、各テーブルで30分、ディスカッションしてその結果を発表するラウンド・テーブル・ディスカッション。

 

私のテーブルのテーマは「メンタリング・コーチング(次の女性リーダーをいかに育てるか)」というもの。

 

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ファシリテーターをマイクロソフトの伊藤かつらさんにつとめていただき、さまざまな意見を交わしました。

 

(ちなみに私のテーブルには、ロフトワークの林千晶さんやアドビの中西りささんといったメンバーもいました)

 

立場の違う人さまざまなメンバーの意見はとてもおもしろく、発見に満ちていた。各テーブルに男性が必ず2名入っていたのも、ディスカッションにとても良い効果があったように思います。

 

ハッとしたのが、「私たちが他の(もっと若い)女性たちの"スポンサー"になるといいのでは」というアイディア。

 

相談相手になるのでもいい、助言をするのでもいい。なにかのチャンスを与えられるようなことがあれば積極的にそうする。意識的に、次世代の女性たちが活躍する場を醸成していく。そういうことができる立場と年齢になったのではないか。

 

これは、改めて言葉にしてもらって大発見でした。

 

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男女雇用機会均等法第一世代のかたもいらっしゃったこのイベント。

 

未だにアメリカでヒラリー・クリントンのようなパワーウーマンですら「ガラスの天井は打ち破れなかった」と言う時代ですが、先に少しがんばってきた女性たちが、次の世代の女性を応援する、というのはとても良い循環を生む、と感じました。

 

(もちろん、理解ある男性にそうしていただくのも大賛成ですよ♪)

 

ともすればピリッと固い雰囲気が漂いがちなはたらく女性を集めたイベントですが、ゆるゆるとリラックスした雰囲気が終始漂っていたのがとてもうれしかった。

 

肩の力を入れなくても女性同士で話し合えるほど我々は熟成してきたのかも、と、ちょっと自画自賛してしまいました。

 

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ひとつ残念だったのが、「幸せに生きるには/幸せに仕事をするには」というテーマがなかったこと。

 

来年から大学院で幸福学を学ぶ私としては、はたらくということも含め、幸せに生きていくには、というテーマも掲げていただけるとうれしいなと思っています。

 

なにしろ、人生の大テーマですから。最終的には幸せになることを目的にしないと、社会や世界は変えていけないと思うんです。よろしければ、トークセッションもさせていただきます! と言っておこう(笑)

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最後に、ニューデリーより、ALL LADIES LEAGUEのグローバル・チェアパーソンであるDr.Harbeen AroraからSkype経由でパワフルなメッセージが届き、閉幕となりました。

 

今年が初回だというこのイベント。来年以降もぜひ、続けていっていただけるといいなあ。

 

www.mediagene.co.jp

北欧の人が幸せなのはなぜ? それは「人生を主体的に生きられる」から。

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『限りなく完璧に近い人々〜なぜ北欧の暮らしは世界一幸せなのか?』という本を書いたジャーナリストのマイケル・ブースさんのトークショーに出かけてきました。

タイトルは、「世界一幸せ? 北欧社会のリアルを読み解く」。版元のKADOKAWA、マイケルさんが連載する朝日新聞GLOBE、フィンランド大使館との共催。

来年から大学院に行って幸福とはなんぞやということを研究しようとしているので、各種調査で幸福度が軒並み高いという結果が出る北欧の国々には興味津々。

でも恥ずかしながら、北欧5か国の国名すらさっと言えないくらい、これまで知識はなかったのです。

マリメッコやH&M、IKEAやNokia、映画にもなったレストラン「ノーマ」といったブランドネーム、北欧のシンプルで素敵なライフスタイル…というイメージのみが頭にふわふわあっただけ。

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果たして北欧の国々は、実に教育と社会保障の行き届いたところなのでした。多くは教育と医療が無料で提供され、失業手当も手厚く老後の心配も少ない。

しかも男女平等で、フィンランド大使のお話によると、外務省で働く人の実に75%は女性。さらに、世界に散らばる大使の46%が女性。これ、クオータ制みたいに割り当て目標を定めた結果というわけではないというところがすごいですね。

(ノルウェーはクオータ制で成果を上げているそうです)。

クオータ制とか、フランスの「パリテ」という概念は興味深いので、いつかまた書いてみようかと思いますが、興味のあるかたは検索してみてくださいまし。

ちなみに、2012年、国連が初めておこなった幸福度調査によると、デンマークは幸福度1位。フィンランドは2位、ノルウェーは3位、スウェーデンは7位(ちなみに日本は43位)。

※国連のレポートのPDFはこちらからダウンロード可能。

Sustainable Development Solutions Network | World Happiness Report 2013

ただし、社会保障が厚いがゆえに所得税は50%前後と高いし、高齢化、格差、犯罪、地方衰退など、やはり日本と同じような問題を抱えている国々でもあるのです。

でもなぜ彼らは幸せだと感じているのか? それは「なりたい自分になれるように人生をコントロールできる」からじゃないかとマイケルさんは言います。自分の人生の主導権を握ることができるから、と。

北欧は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスの研究によれば、社会的流動性(ひとつの社会のなかで、職業や階級、場所の移動が可能かどうか)において、主要4か国が世界1〜4位を占めているそう。

その意味で、アメリカよりもずっと、なりたい自分になる自由ややりたいことをやる自由がある、といいます。上記調査でアメリカははるか下位に位置していますから。

これに欠かせないのが学校教育。経済格差が小さいこと、福祉のセーフティーネットが充実していることと同じように重要だ、というマイケルさんの話は本を読んでいただくとしましょう。

それにしても、どうやったらこんな北欧の国々のように幸せに暮らしていけるのだろう…と、電車に揺られて帰りながら考えてみたのですが、福祉や教育の充実、というのがひとつの解なのならば、所得税をもう少し支払ってもいいな、という結論に達しました。

それで老後も安心して暮らせるのならば、いいよね。

ちなみに、この本を書いたマイケル・ブースさんは、皮肉とユーモアたっぷりの『英国一家、日本を食べる』(原書は2010年発行の"Sushi & Beyond")の著者。NHKでアニメ化もされたので、記憶のある方もいらっしゃるかもしれません。

その"Sushi & Beyond"のアニメが、今年、農林水産省のYouTubeチャンネルで外国人向けに作成、公開されているので貼り付けておきますね。

今、マイケルさんは『英国一家、日本を食べる』の続編を書いているそうですよ。

youtu.be

 

今回、トークのテーマになった『限りなく完璧に近い人々〜なぜ北欧の暮らしは世界一幸せなのか?』もマイケルさんのユニークでウィットに富んだ語り口で、とても楽しく読める北欧論になっているので、興味の湧いたかたはぜひ読んでみてはいかがでしょう。






マリメッコ展にも行かなくちゃ!

www.bunkamura.co.jp

大人の色気はひとりの時間でつくられる。

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ブランド・コンサルタントの守山菜穂子さんと2人で1つのテーマについて語るサウンドマガジン「Beautiful 40's」。11回目の今回は、「大人の色気」がテーマだった。

 

色気か…そもそも、色気ってなんだろう。

 

広辞苑の第四版で「色気」を引くと、1.色のぐあい。いろあい。2.愛嬌。おもむき。風情。3.異性の気をひく性的魅力。4.女っ気。(以下略)とある。

大辞林の第三版では、1.色の調子。色合い。2.異性を引きつける性的魅力。3.愛嬌。愛想。4.異性への関心。(以下略)とある。

 

なんだかどうやら、色気というモノはおもに異性に対する態度や心持ちらしい…って、いやそれでいいのか。

色気って、異性に対するものだけじゃないと思う。なんだか、それだと狭すぎる気がする。

 

結論として「余計な力の入っていない、自然体で余裕のある状態」と考えた(詳しくは下記リンク先のサウンドマガジンで聴くか、テキスト書き起こしで読んでくださいね)。そんな人からは、やっぱり魅力を感じると思うのだ。

 

菜穂子さんとのサウンドマガジンの中で話しきれなかったことがある。

 

それは、余裕って、ひとりの時間をどう過ごすかでつくられるものじゃないかな、ということ。

 

ひとりのときに、他のことをあれこれ考えるのをやめて、自分と向き合う。そして今、ここにいる自分を感じる。どんな自分であっても、しっかりと受け止めて肯定する。そういう時間を持っている人は、きっと何事にも自然体で向き合えるんじゃないかと思うのだ。それがきっと、人としての色気になっていく気がする。

 

でもなかなか、そんな時間をつくろうったってできない。流行の瞑想だって、やってみても結局身につかなかった、という人も多いと思う。

 

そこで、私が実践している方法は、お風呂タイムの利用。シャワーでも、バスタブに浸かるのでも(こっちがおすすめ)、お風呂に入っている間は何も考えないように努力する、ということ。

 

いったんここで頭の暴走を止める。そして寝るまでの間、ゆったりと自分と向き合ってみるのはどうだろう。その日にあったことを振り返ったり、その日起こったいいことを書き出してみたりするのもいい。私の場合、そうしているとなんだか幸福感が増してくる。

 

今日もいいことがあった1日だったな、と、感謝とともに眠りにつくことができれば、きっと新しい朝が待っている。

 

そうやって毎日をリセットしながら過ごしていくと、きっと今よりも自然体で余裕のある状態になれると思う。そして、そんな色気のある大人でありたい、と思うんだけど。

菜穂子さんも、彼女らしい「色気」について語ってくれたのでとても興味深かった。ぜひサウンドマガジンもお聴きください!

photo: Miki IKeda

 

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私が旅に出る理由〜君が大切だってこと。

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19歳。フランス語と文学を学んでいた大学生だった私は、田舎の街からフランスに旅立った。それから何度もパスポートを更新して、いろんな旅をしてきた。

旅という言葉にはカルチャーっぽくておしゃれなイメージが漂う。私もエディターとしてそういうイメージづくりの一端を長年、担ってきた。

 

でも、実際にそうなのだろうか。

スーツケースに荷物を詰めながら、なんて面倒なことだと思う。出発の前日になると、どうして私は旅に出ようなんてことを思ったんだろうと後悔が始まる。たいてい、早起きしなくてはならないのもつらい。

 

たとえば海外の場合、出国して飛行機に乗ってきゅうくつなエコノミーシートに身体を預けて眠れぬ時間を過ごし、なぜ私は長時間、こんな苦しい思いをしているんだろうと思う。

目的地に着いて、違う空気を吸って違う匂いを嗅いで、違う顔をした人たちがいて、知らない言葉が聞こえてくると急に不安になる。何の理由もないのに、入国検査官に何か咎められるのではないかと思う。

ターンテーブルからスーツケースを受け取ると、呼び止められてすべての中身を出させられたことがある。ロサンゼルスだった。君が怪しいわけじゃない。ランダムに検査するんだ。決まり事なんだよ。

 

空港を出て街に出る。タクシーであろうと電車であろうとバスであろうとレンタカーであろうと、この瞬間が一番ストレスを感じる。


旅の最中もハプニングの連続だ。見知らぬ街を、この方向でいいのかと思って歩きながら、なぜ、私はこんなところにひとりで来てしまったのだろうと思う。私がいま、この国のこの通りを歩いていることはおそらく、誰も知らない。もう一度思う。なぜ、私はこんなところにひとりで来てしまったのだろう。

 

そして時差に慣れ、水と空気に慣れ、言葉に慣れ、その国の紙幣と硬貨に慣れ、食事に慣れた頃には帰国しなければならない。

帰国したらしたで、スーツケースを開けてみればこじ開けられた跡がある。「悪く思うなよ、法律に従ってあんたの荷物を調べさせてもらったぜ」と書かれた紙が入っている。ニューヨークの果てまで出かけてワイナリーで買ってきたワインの封蝋がナイフで切られている。

たまった洗い物を洗濯機に放り込んで、ゴワゴワになった髪を慣れた軟水で洗い流す。違う食生活で肌も荒れたみたいだ。疲れた。明日は出社しなければ。仕事がたまっている。でも時差で眠れない。来月のクレジットカードの請求はいったいいくらになっているのか…。

帰ってきたら、じわりと実感が湧いてくる。飛行機の中で、現地の新聞を破いて情報をくれた人。電車の乗り方を教えてくれた人。素晴らしい景色。美味しい食事とワイン。たまたま出会って翌日の宿を一緒に選んだバックパッカー。思わず女性同士で人生談義をした夜行列車。彼女はイタリアの公務員だって言ってたな。

面倒だったことや不安だったことはすべて忘れて、素敵な記憶だけが残る。それは。宝物のようにキラキラといつまでも輝いている。

だから、私は次の旅に出たくなるのだ。

 

そうやって、いろんなものを見たい、体験したいというのがまず先だった。社会人になって時間が経つと、今度は、旅先では、ふだんの生活で肥大化してしまった会社名や肩書きや自己意識を捨てて、生身の自分自身で世界に向き合わなければならないことに気がついた。

 

その、世界にむき出しの自分のまま立っているというヒリヒリした感覚が、ともすれば流されがちな日々にあって「生きているんだ」と実感させた。

 

今。それからずいぶん旅慣れて、この年齢になって、遠くに来て世界に向き合って「なぜ私はここにいるのだろう?」と思ってきたことに、ようやく答えが見つかった気がしている。

 

遠くにいても思う人。無事でいてねと祈ってくれる人。ただいまと伝えたい人。そう、私は、そんな大切な人たちのことを改めて思い出すために、はるばる遠くまで出かけていくのだろう。そして、しばしの別れを経てまた再開したときに、世界は私にとってこうだったんだよ、そして、君が大切だってことをずっと思ってたよ、と伝えたいんだ。きっと。

 

ブランド・コンサルタントの守山菜穂子さんと月に1回公開しているサウンドマガジン「Beautiful 40's」で、今月は「旅」をテーマに語り合った。

 

守山さんは「ソーシャル旅行」について、私は「旅は幸福感をアップさせる」ということをお伝えしている。ぜひ私たちのおしゃべりもお楽しみください。

 

photo : Miki Ikeda

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大人の女のひとりの食事と幸福論。

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「食事ってさ、結局、何を食べるかより誰と食べるか、が大切なんだよね。」
「孤食って、ダメだよね。」

 

うん。そんなのわかってる。理屈をいわなくたって、ちゃんと体感してる。でも、その前に。そんなシチュエーションにならないことも、多いのよ。

ひとりっ子でいわゆる鍵っ子だったから、子どもの頃からひとりでご飯を食べることが多かった(嫌いなものを残すと、後で怒られたけどね)。そういう子は、まわりにもけっこういる環境だった。

 

嫌いなものを無理に食べなくてもいいような大人になって、いろいろな時期を経て、さらに年を重ね、私はふたたび毎日、ほぼひとりで食事をしている。

朝のコーヒー。出先や社食でのランチ。約束やパーティーがない日の夕食。誰と食べるかが大切、といわれても、ひとりで食事せざるを得ないのが現実なのだ。さびしい女だと思われるのだろうか?

人はひとりで過ごすと、一般的に、幸福度、モチベーションや集中度が低く、無感情の状態になるという。ひとりでいて何もすることがないと、精神は心配すべきことを見つけて考え始めてしまうのだそうだ。確かに、そうだと思う。

 

ものを食べるときには、普段よりもポジティブな感情を感じる傾向にあるということが研究でわかっている。けれど、食事の時間は、起きている時間のほんの5%程度。その時間を、ひとりで食べなければならないからと憂う必要があるだろうか?

 

むしろ、ひとりでいるときに自然にマイナスになりがちな感情ってやつを、食事というポジティブな感情で補うといいんじゃないの、と思う。

 

ひとりの食事の時間をより幸福なものにするために、私はいろんなことを心がけている。

たとえば、テレビを始めとする映像コンテンツは見ない。本を読んだりネットを見たりSNSもしない。つまり、ほかのことを考えず、ちゃんと、食事に集中することにしている。

食べるものは、可能な限り、なにか自分にとって意味のあるものにする。農家の友達がつくったお米を炊くとか。震災復興マーケットで買った野菜を使うとか。おみやげでもらった調味料を使うとか。女子友と交換したレシピでつくるとか。今度、恋人と一緒に食べたいと思っている料理を試作してもいい。テイクアウトでもレトルトでも、これが好きだから、と意思をもって選ぶ。

外食だってそうだ。ひとり客をあたたかく迎えてくれる心地のいい店を、いくつか見つけておくといい。私には、1杯だけいただくグラスワインを、いつも無言でほかのお客さんより多めに注いでくれる行きつけのビストロがある。ランチタイムには、苦手な食材が入っていないかどうかをチェックして先に教えてくれるオステリアもある。

 

そうして日々を自分なりにていねいに過ごしていると、誰かと食事をするという素敵なチャンスに恵まれたときは、その時間をより幸せに感じられる気がする。

 

もうずいぶん前に、友人がこう言った。誰かに食事に行こう、って誘われるのって、奇跡みたいな出来事なんだよね。だって、いろんな条件が揃わないと実現しないじゃない? だから大事にしたいんだ。

まだ大人になりきれていなかった私は、たかがご飯を食べに行くだけのことを、ずいぶんたいそうに表現するのね、と驚いた。でも、年を重ねていくうちに、それが本当に奇跡の連続だったのだということを、少しずつわかっていった。

 

大切なのは、あなた自身が、どうすれば心地いいのか、気づくことなのだと思う。自分自身を注意深く観察してみると、いろいろとおもしろいことがわかってくる。ひとりの食事はきっと、それに最適な時間だ。

「フロー*」という概念を提唱した米国の心理学者、ミハイ・チクセントミハイは、幸福であるために交友関係の重要さはどれほど高く評価してもしすぎることはないという。しかし、こうも述べている。

 

長い目で見ればより有用であるという点で習得するべきスキルは、孤独に耐え、孤独を楽しみさえする能力である。『フロー体験入門』

 

毎日の生活を素晴らしいものにするかどうかは、あなた自身がものごとをどのようにとらえ、どのようにするか、にかかっている。

 

子どものころ、孤食を経験してきた私は、それでもなんとかちゃんとした大人に育ってきたんじゃないかと思うんだけど、どうだろう(笑)


ブランド・コンサルタントの守山菜穂子さんと月に1回公開しているサウンドマガジン「Beautiful 40's」では、毎日の「食」をもっと楽しくする40代女性たちの視点、というテーマで語りあっている。

ここでは「自分でコントロールできるという感覚は大事」ということを話したり、私がとある告白をしてみたり…ぜひ私たちのおしゃべりも楽しんでいただければうれしいです。

*フローとは、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう(Wikipediaより)

 

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大人の女のSNS論。

 

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SNSは人を決して幸せにはしないという研究結果が数多く発表されている中、それでも上手にハッピーに使っている大人の女性たちには共通の特徴がある。

 

「距離感」だ。

 

たとえば、Facebookを例にとると、忙しくて余裕がなかったり、ちょっと気持ちがローな時には見ないようにしている。自分自身も発信しない。そして、元気になったらまた復活するという人がいる。

 

タイムラインを一切見ない、という人もいる。誰かに会うときはその人のページに行って近況をさっとチェックするだけ。

 

逆に、タイムラインを眺めるのが楽しみ、という人もいる。いろんな人がシェアした記事を読んだり、近況を見たり、イベントの情報を知ったりするのが楽しい。だから、気分が上がらないときは、タイムラインを眺めて世界の多様さに思いを馳せ、元気の源にするという。

ごく少数のリアルな友人同士だけでしか繋がっていないのよ、という人もいる。自身のビジネスの拡大のために意識的に情報シェアのために使っている人もいる。

 

つまり、セオリーに正解はないのだ。あるのは「自分にとって心地よい距離感を見つけて、保つ」というシンプルな行動のみ。

 

ふとこれ、現実の人間との関係に似ているな、と思った。

 

心地よい距離感を見つけて、保つ。言うのは簡単だけれど、実はそうではない。

 

心地よい人間関係をつくるために大人の女性がかけてきた時間と、使っている気持ちの総量は相当なものだ、と思う。その中には数々の失敗も含まれる。

 

意地を張りすぎて親友とケンカしてしまったこと。どうしてもと無理な人を追いかけてしまったこと。納得できなくて不毛な議論を続けてしまったこと。痛い思いを経験してきたからこそ、うまく飲みこみ、さらりとかわし、さりげなくケアする術を身につけてきたはずだ。

 

見えない努力を日々積み重ねてきた結果の心地よい人間関係。その自分なりのセオリーをSNSにも応用すればいいのだ。「怖いし面倒だから、SNSはまったくやっていない」という女性にもたまにお目にかかるけれど、とてももったいないと思う。

 

SNSはもはやリアルな社交空間。気持ちのいい場所にするもしないも自分次第でなんとでもできる。

(それでも突っかかってくる人や、違う意見を聞かないなんてどういうこと、という人がいれば華麗にスルーすればいいのだ。タイムラインを心地よいものにするのは、誰にも侵されてはならない「私の自由」だからね)。

ブランド・コンサルタントの守山菜穂子さんと月に1回更新しているサウンドマガジン「Beautiful 40's」では、今回「幸せになりたい40代女性は SNSとどう付き合うべき?」と題して語り合った。

それぞれの使い分けや、ブランド・マネージャーとしてのSNSとの付き合いかたのアドバイス、幸福学の立場から見たSNSと、さまざまな話題が出た。やけに2人とも楽しそうにしゃべっているのは、基本的にネット空間が大好きだからなんだろうな(笑)

そう、私と守山さんは、そもそも15年ほど前にネットで知り合った仲なのだ。この話はまたいずれ、どこかで。



 

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熊本への帰省#04 ご縁があったらまた会いましょう。

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「ご縁があったらまた会いましょう」と、この帰省の最中、何度もいわれた。

 

阿蘇・大観望で会った、名古屋から来た家族。震災後なのに失礼かもしれないと思って今、熊本に来てみて、自分の目で現実を見て、優しく心温かい人々に出会ってよかった。ここでもあなたに話しかけてみてよかったわ。ありがとう。ご縁があったらまたお会いしましょう。

 

阿蘇の温泉宿で日帰り温泉に入りに来ていたご婦人。私の家は大津なの。一部損壊よ。でも、くよくよしてたって仕方ないじゃない。温泉に入って、気持ちよくって、そして明日もがんばろう、って思うしかないわよね。あなたもいいお湯を、ご縁があったらまた会いましょう。

 

宿から阿蘇神社までタクシーに乗せてくれた70代の運転手さん。本震の日に、孫娘が立野を崩落10分前に車で走って帰ってきてたんだよね。命って、あるかないかギリギリのところにあるんだね。それがわかったよ。実は私、今日は非番なんだけど、阿蘇に来てくれる人のために車走らせたいじゃない。命があるんだもの。ご縁だもの。あ、ここを曲がると阿蘇神社だよ。気をつけて行ってらっしゃい。ご縁があったらまた会いましょう。

 

運転手さんは、私の姿が見えなくなるまで手を振ってくれた。   

 

偶然のタイミングと、保たれている命と。すべての出会いは奇跡のようなご縁のできごとなんだな、と思った。旅先だけでなく、それは、日々の退屈に思える生活でも、きっとそうなんだろう。

 

私も、生きていこう。

熊本への帰省#03 阿蘇神社〜大きな生のいとなみの中に。

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楼門と拝殿が倒壊するという甚大な被害を受けた阿蘇神社へ。 折しも、今年の稲の出来と豊作を祈るお祭り「御田祭」が終わったばかり。権禰宜・内村泰彰さんのインタビューをする「防災ガール」メンバーの傍らで話を聞かせてもらった。

 

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もっとも印象に残ったのは「神社は自然とともにあるもの。災害が起こっても神事は絶やさない。それが神社のつとめなのだ」という言葉。

 

倒壊した楼門の向こうで祭り囃子と若者の歓声がきこえ、境内でヒグラシが静寂を縫うように声を上げる。拝殿の裏側から美しい夏の夕日がやさしくこの一体を照らす。

 

そんな中にひととき身を置き、大きな自然のいとなみも、人のいとなみも、同じく大きな生のいとなみの中にあること。私たちはそれを受け入れつつ、知恵を絞って共存していく存在なのだということ。

そういう謙虚な思いで満たされた。

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防災ガールによる内村権禰宜へのインタビューはこちら。

bosai-girl.com

熊本への帰省#02 阿蘇へ〜復興の湯の幸せと、見知らぬ人との出会いと。

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ややありて次のひぐらし鳴きにけり 美樹

 

阿蘇の曲がりくねった長い道をソロドライブで、今宵の宿に到着した。今日は、東京からやってきている仲間たちと阿蘇神社で合流することになっている。

 

途中で立ち寄った景勝地「大観峰」で、名古屋から家族旅行に来ているという家族連れに話しかけられた。

 

熊本のかたですか? 震災の後のこんな時期に失礼かな、と悩んだんですけれど、これも意味のあることかなと思って熊本に来てみたんです。実際にこの目で見て、いろいろなかたとお話しできてよかった。復興って、これからのことなんですね。それがわかりました。テレビで見ているだけじゃわからなかった。今回見たこと、聞いたことを周囲に伝えようと思います。さっき撮っていただいた写真を、来年の年賀状にします。がんばってください。

 

宿では、日帰り温泉に入りに来ているというご婦人にも話しかけられた。

 

私、大津(熊本県菊池郡)なんです。我が家?  一部損壊しました。でもね、くよくよしてたって仕方ないの。こうやって大好きな温泉に入りに来て、明日もがんばろう、って思うしかないじゃない。いいお湯があって、明日があって。命あってこそだものね。あなたは東京から? ああ、ご実家が熊本市内なの。大丈夫だった? 今日はお会いできてよかったわ。温泉楽しんでくださいね。

 

旅先での出会い。名も知らぬ人とのほんのひととき。それでもわかることがある。

 

心やさしき人がいて、心強き人がいて、今日があって、ちょっとだけ幸せを感じられて、明日もあると信じられればいい、ということが。

 

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今回お世話になったのは、「本震」後に甚大な被害を受け、湯が枯れてしまったにもかかわらず、温泉を新たに掘り、3か月で復興を果たした「蘇山郷」さん。まさに復興の湯に浸かり、心身ともに蘇り、幸せを感じました。

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